大和市民活動センター


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★第100回連続共育セミナー

 

第100回の記念すべき共育セミナーを10月29日(土)にオンラインとセンター参加者のハイブリッド型で開催しました。ここ1年、コロナがなかなか収束しない中、市民活動が人と人をつなぐ意味で、大きな役割を果たすことには変わりはないという観点から、社会貢献活動に関わる多くの人々にエールを送り、一歩踏み出す勇気を持つ人を後押ししたいという趣旨で、このセミナーを継続開催している。
今回は、(一社)国際多文化研修ラボ代表理事、(一財)自治体国際化協会地域国際化推進アドバイザーの松本義弘さんと、(特非)ワーカーズ・コレクティブチャイルドケア理事長の永井圭子さんをゲストスピーカーにお招きして、それぞれの活動報告をしていただいた後に、「多様化する社会に生きるということ」をテーマに、トークセッションを展開していただいた。今号では、この日のセミナーでのおふたりのトークから、ますます多様化が進む社会において、どのようにインクルージョンを進めていけばよいのかは大きな課題ではある中で、私たちには何ができるのか語っていただいた。そのエッセンスとそこから得られた方向性を報告する。
文責:船越 英一 イラスト:望月 則男

 

事例報告1
「やさしい日本語」研修で伝えていること」、
多文化共生とは etc     松本 義弘さん

 

松本義弘さんとは、今回のコーディネーターの船越が大和市役所で、多文化共生を担当していた時に県内自治体の担当者が集まる会議で出会いました。当時の県庁の国際課は、自治体の担当者の意見に耳を傾け、自治体と一緒に多文化共生施策を進めて行こうという風土があり、自治体側も、一自治体で取り組むには大きすぎる課題であるため、広域連携して取り組んでいきたいという機運があり、全県で連携して取り組むため、「かながわ自治体の国際政策研究会」という場で、職員は議論し、実践を繰り返していました。アフターファイブで、交流を深めることも多くありました。
そこで、松本さんには本音で多文化共生を推進していくためのサジェスチョンをいただく仲となりました。大和市も横須賀市も、(公財)大和市国際化協会、NPO法人横須賀国際交流協会という現場を抱えていたので、外国人支援スタッフぐるみの交流が生まれ、担当者間のコミュニケーションも密になり、本音で語り合うことができました。
  今回は松本さんがされている活動のうち、@「やさしい日本語」研修で伝えていること、A「多文化共生とは」を中心に伺いました。
  今回、「やさしい日本語」を広めて行く中で必要なことだなと、改めて認識したことは、
@ 地方自治法第10条(住民基本台帳法第4条)には、市町村と都道府県の住民は、自治体のサービスを日本人と同様に受ける権利があること。加えて、手数料、使用料、税などを負担する義務があること。ここには、「日本国民たる」の国籍制限がない。という根拠があること。
A 生命・財産の保全、緊急度の視点で伝えるべき情報を取捨選択する(情報トリアージ)の必要性でした。日本語を母語としない人、目や耳が不自由な人(老眼、耳が遠くなっている人も)にとって、日本語を読む・聞くことは大きな負担だからです。
  このようなことを踏まえて、松本さんは自治体職員向けに、また、「やさしい日本語」が必要な人たちを支援する人たち向けに「やさしい日本語」の伝道師として全国を「旅芸人」(ご本人談)のように巡業されています。


松本さんの報告に、東京都港区のやさしい日本語を公文書に積極的使っているというお話がありました。以下のHPでご確認ください。
港区ホームページ/実践!やさしい日本語による公文書

 

おもしろいと思ったことを突き詰めて、一つの木に登ると、次に他の木に登ると最初の木とつながっていたりして、専門性が一気に跳ね上がります。そこで、ターザンのようにいろいろな木に移りながら、ここから見るとこうだよねっているのがわかるような人になりたい。そのモチベーションをお分けしていきたい。


事例報告2 
子育て支援の課題へのアプローチ
永井 圭子さん

 

永井圭子さんは、皆さんご存じのとおり、(特非)ワーカーズ・コレクティブチャイルドケアの理事長をされています。永井さんが代表をされている「チャイルドケア」は子育て分野において、個別的、機動的かつ丁寧に支援を行われています。その永井さんに松本さんと是非対談して頂きたいと考え、今回のキャスティングをさせていただきました。
  実は、永井さん、第1回の共育セミナーのスピーカーだったのですが、その永井さんが第100回のゲストスピーカーとして登壇されたので、時代は巡るのだと思いました。
永井さんは、大和市平和都市推進事業実行委員会の会長を長年務められていて、今年も大和市の「ヒロシマ平和学習派遣事業」で子どもたちと一緒に広島平和記念式典への参列や広島平和記念資料館の見学、被爆体験者の講演を聞かれたりされたとのことでした。「子育て支援」とともに「平和」もライフワークとされています。
「チャイルドケア」は設立して22年。その活動の需要は多く、大変お忙しいはずですが、永井さんはそこにとどまらず、新しいことに、常にチャレンジされています。

2020年には、神奈川県内には1ヶ所しかない「ホームスタート」を開始されました。ホームスタートは、未就学児が1人でもいる家庭に、研修を受けた地域の子育て経験者が訪問する「家庭訪問型子育て支援ボランティア」のことで、友人のように寄り添いながら「傾聴」(気持ちを受け止めながら話を聴く)、「協働」(一緒に何かをする)して、孤立しがちな親子のもとへ支援を届けているということで、市外へ訪問に行くこともあるそうです。
  また、この9月からは、「NPO法人パノラマ」が大和東高校で新たに始めた、校内居場所カフェ「朝BORDER」にボランティアで参加されています。朝7時30分スタートで1時間半ぐらいの高校生への朝ごはん提供事業ですが、運営するこども食堂で面倒をみてきた子どもたちが、高校受験をする年代になって、学習支援もしている永井さんが、高校生とふれあってみたいと飛び込まれたとのことです。
  カフェにやって来る高校生と「おはよう」とあいさつを交わし、おにぎりやパンでお腹を満たした彼らとの何気ない会話で、エンパワメントされると語りました。
  さらに、永井さんは、ファーストステージの若者や母子家庭の子どもたちに、居場所となる住まいを提供しようと模索を始めています。そのあくなきチャレンジ精神に大きな拍手を送ります。

 


大和市内には、まだ銭湯が残っていて、子どもたちは大喜びとか。(たまふろ)活動
インクルーシブな社会の実現のためには、まだまだ課題はいっぱいありますが、やろうと思う人が声をあげてやるしかないと思います。それを解決していけるパワーをいつも持っていたいと思います。

 

トークセッション 松本義弘さん×永井圭子さん
多様化する社会に対応するには、どうしたらいいの

 

松本 コロナ、円安、地球温暖化等の課題がある中で、昨日、全国で3番目のフェアトレードタウンである逗子市に3回目の認定のための現地調査に行きました。そこでショップの経営者から話を聞きました。「途上国の商品を買い叩かずに、正当な価格で買うというシステムですけど、そうするとちょっと高めのものがもっと高くなるんですけどやっていけないんじゃないですか」と厳しい質問をしたら、「辛くはなると思いますが、1ドルが360円の時代からフェアトレードをやっていた先駆者たちがやって来たのだから、私たちにできないことはありません」という前向きな答えが返ってきました。こういう人たちが多様化する社会、暗い影が忍び寄ると想像される事柄を乗り越えていくのだと強く感じました。

 

永井 このような中で、私に何ができるかなって考えるんですが、地域にいる、身近にいる、足元にいる人たちのことを忘れてはいけないと思うんです。コロナですごくストレスが溜まっていて、厳しい子どもたちもいます。実際、大和市でも、虐待やネグレクトが増えてきています。そのなかで、私にできることは、子どもたちや保護者にこれまでと同様に寄り添っていく、いろんなことがあって、一様には言えないんですけれど、「つまずいていることがあれば一緒に考えるよ」っていう立ち位置でいつも待っている存在になれたらいいなと思っています。

 

松本 こども食堂をやられていて、今は仕入れ値が高騰して大変なのではありませんか。

 

永井 こども食堂は、多くの人の寄付をいただいて、ボランティアが運営していますが、コロナ禍で意識の向上が見られますし、みなさんが少しづつ、いろんな形で寄付をしてくださっています。何もできないけどお金で寄付をするという人もいます。だから結果としてそんなに寄付は減っていません。寄付をしてくれた方に対しては、事業の報告をしています。このようにゆるゆるとつながっている人たちが大勢います。さまざまなことをするときに、できる人ができることをしてくれます。だから成り立っています。

 

松本 日本のコミュニティーって、キチキチっと準備をして、思い通りにいかないと怒っちゃうような仕組みづくりって結構あるんですが、永井さんの活動は非常に多岐に及んでいるけれど、非常に緩やかにやられている。だから、こんな辛い状況でも支える人数が増えたということですね。このような求心力があるのは、おおらかでゆるやかな枠組みをお持ちだからだなと感じました。

 

松本 永井さんの支援する外国ルーツの子どもたちを更に支援するためには、教育委員会や国に支援教育アドバイザーのような人がいるということを知れば、その制度を活用できます。先ずは知ることが大切です。ワンストップアドバイザーという形で、国際化協会などに配置してもらえるよう働きかけるといいかもしれません。事例報告でお話ししたように、港区では外国人の保護者だけではなく、日本人の保護者にもやさしい日本語で文書を送付しています。そういう事例を実際に見ていただくといいですね。知ることが次の行動につながります。