★第57回連続共育セミナー
「NPO会計『活動計算書』の作り方」
〜活動の整理整頓・次への準備〜
2013年3月19日(火)18:30〜20:30に行われた連続共育セミナーの内容(概要)をお伝えします。
講師:板倉幸子 氏(税理士・一般社団法人公益アシストかながわ理事・認定NPO法人会計税務専門家ネットワーク理事)
「改正NPO法」が昨年4月から施行になりました。NPO法人会計報告は「収支計算書」→「活動計算書」に変わっています。今までも年度末になると慣れない会計報告書の作成で悩んでいたのに、NPO法改正で提出書類が変わったのでますます不安な気持ちになっている方も多いのでは?
今回の「共育セミナー」はNPO活動の更なる認知と信頼を目指して大和市民活動センター登録団体より「一般社団法人公益アシストかながわ」の皆さんにお願いして実現しました。
内容
(NPO法人にとって会計の役割りは?)
●会員等へ、お金が適正に使われたかどうか報告する義務がある
●さまざまな市民に、自分たちの活動を理解してもらう
わかりやすい会計報告が入っていると、市民の方が「寄付しようかな」と思うかもしれません。今後はNPOの活動報告と会計報告を確認してから寄付する人が増えてくるでしょう。活動を拡大するために会計報告を活用しましょう。
(NPO法人会計基準とは)
NPO法人向けの会計指針がこれまでなく、作成に苦労している団体がたくさんありました。また、NPO法人同士の比較もできませんでした。そこで、民間主導で会計基準の策定が進められ、2010年7月に発表されました。全国統一のフォームで経理の書類を作ることにより、同じ目線で色々なNPO法人を比較できるようになりました。
(NPO法改正のポイント)
●収支計算書→活動計算書に改める
●財産目録の位置づけが緩やかになった
当分の間は収支計算書でも可ですが、ぜひみなさん早めに切り替えてください。他団体が活動計算書へ切り替える中、収支計算書のままだと「自分たちのお金の流れをきちんと表示しましょう」という考えた弱いのかな、と思われてしまいます。将来の活動を拡大するためにもとても重要なことだと思います。
(財務諸表の体系)
●財務諸表(活動計算書、貸借対照表、財務諸表の注記)
「注記」は財務諸表の大事なところを説明するもので、非常に重要です。
●財産目録
(活動計算書とは)
収支計算書と違い、活動計算書は株式会社の損益計算書とほとんど同じようになりました。企業会計をやっていると非常にとっつきやすいです。
(貸借対照表)
NPO法人の
資産、負債、正味財産の有り高を示すものです。
(財務諸表の注記)
活動計算書や貸借対照表を補足するものですが、自分たちの法人独自の活動を市民や会員さんにアピールできる表なので、非常に重要です。今年度のみの事業等ここで示すことができます。
(収支計算書と活動計算書の違い)
●未収金
事業を行なった年度と、実際にお金が入る年度が異なる場合、例えば本日3月19日の研修を例にとると、今日はみなさん会場で参加費をお支払いになったそうですが、事業によっては実際に参加費が入るのが次年度4月になる場合もあると思います。これまでは4月の事業収入とすれば良かったのですが、これからは3月の収益として活動報告書に記載し、貸借対照表には未収金とします。
●借入金
銀行から180万円借りた場合、純粋な収入ではないので活動計算書には記載しません(利息は経費として活動計算書に記載)。貸借対照表には借入金として載せます。
(活動計算書の勘定科目)
活動計算書は収益(経常収益)と費用(経常費用)に分れています。経常費用は事業費、管理費に分けます。独自の活動があれば、それに合った解りやすい科目をつくることができます。
(事業費と管理費とは)
事業費は事業のためのTシャツ等の仕入れ、講師への謝礼、あきらかに事業に直結する経費等です。管理費とは各種事業を管理するための費用、人事、報告等にかかった経費です。
事業費が少なく、管理費の方に軽費の多くを入れてしまっているNPO法人が多いのですが、電話代も事業にかかった部分は事業費に入れましょう。管理費ばかりが多いと、あまり活動をしていないというイメージを持たれてしまいます。管理費は本当に管理部門のみを抽出しましょう。
(共通経費の按分)
実際問題として軽費を事業費と管理費に分けるのは難しいものですが、まず管理部門にかかる経費はどのようなものがあるかを考え、それ以外は経費とします。
次に、事業部分と管理部分にかかる経費がある場合、按分する割合を考えます。
● 面積割合
(例)家賃が10万円の場合、部屋の面積から事業分7万円、管理分3万円と分ける。
●従事割合
(例)
スタッフA 事業部門で50時間、総会で5時間、1ヶ月合計55時間勤務
スタッフB 事業部門で40時間、登記で5時間、1ヶ月合計45時間勤務
スタッフA 、Bを合わせると、事業部門が90時間、管理部門が10時間となり、そのように経費をそのように按分します。
面積や時間、日数等で事業費、管理費に按分していくと、かなりの部分が事業費に入ると思います。
(複数の事業を行っている場合)
複数の事業を行っている場合、活動計算書では1つ、1つの事業にいくらかかったかわかりません。そこで、実際にはA事業費、B事業費と事業ごとに計算し、財務諸表の注記に載せていきます。
●費用の内容から判断し、例えば文房具を購入した場合、A事業の物ならA事業に入れます。
●費用のうち、容易に判断できないものの場合、按分の作業がはいってきます。
(寄付金)
「A事業に使ってくださいという指定で寄付金を3月に受け、実際に事業を行うのは6月というように年度をまたいでしまう場合があります。金額が大きいとすごくがんばったように見えますが、実際に事業を行う次年度は赤字となりアンバランスになてしまいます。この場合に注記でフォローしていきます。
(無償等で物的サービスの提供等を受けた場合)
支援者から土地や建物、車などの提供を受ける場合があります。金銭換算して
財務諸表にのせるかどうかは各法人の自由ですが、望む場合は重要な財産なので貸借対照表に載せましょう。載せないと何も財産がない、何もやっていないように見えてしまいます。「こんなに支援を受け、こんな素晴らしい活動をやっているんですよ」ということをアピールしましょう。体育館の使用料を無償にしてもらったというような場合は、注記に記しておきましょう。
(ボランティアによる役務提供を受けた場合)
ボランティアの方の活動がたくさんあり、その労力を財務諸表でも見せたいという時、その労力がきちんと算定できる場合は注記に載せます。
(給料の出ないような小さな団体の人件費は載せた方が良いか)
人件費を書かないと書き忘れと思われるので、「人件費 0円」として載せます。
(おわりに)
●経費等を事業別に分けるとなると、手作業では大変です。会計ソフトの導入をお薦めします。
●おすすめのホームページです。とても便利なので利用してください。
みんなで使おう!NPO法人会計基準 http://www.npokaikeikijun.jp/